鍵は股関節と胸の間に生まれる“捻りの差”。2年連続トリプルスリー・山田哲人の打撃フォームを徹底分析
昨年に引き続き、トリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)を達成した、ヤクルト・山田哲人選手。これは史上初の快挙です。最近は様々なデータに基づいた分析がなされ、相手チームのマークもより厳しくなります。その中で素晴らしいこのような成績を残せるのは、一体なぜなのか。数多くのトッププレイヤーのトレーニングやケアを行うアスレティックトレーナーに、その成績を成し得る秘訣を”身体の使い方”という観点から分析して頂きます。
山田選手のフォームを見ていく前にまず、打球を遠くに飛ばすために用いられる3つの力について触れておきます。
打球を遠くに飛ばすためには
①位置エネルギー
②並進エネルギー
③回旋エネルギー
の3つのエネルギーをうまく使う必要があります。
地球には重力がありますから、高い位置から低い位置に落とす方が落下のエネルギー(位置エネルギー)を使うことができます。しかし、
並進エネルギーは簡単に言えば、助走をつけた方が勢いが出るというこ
バッターボックスから出ずに助走を使うためには、
一方で回旋エネルギーは上記の2つと比べ、打つ確率を減らさずに使うことができるエネルギ
人間の体において回旋する関節というのは「股関節」と「胸椎」の2つです。
バッティングにおいて「腰を回せ!」は股関節の意で「肩を回せ!
山田選手はあまり大きくない身体であるにも関わらず、このエネルギーを使うことにとても優れています。
それでは山田哲人選手のバッティングフォームを見ていきましょう。
まず、特徴的なのは高いところにバットのグリップ(トップ)を保っているところ。これはバットをスインドと共に振り下ろしてくることで発生する位置エネルギーを使用するためです。
左足を高く上げるのも、位置エネルギーにおける落下の力を利用するためと考えられます。
大きく上げた足をクロス気味に入れています。独特の足の上げ方ですが、これはヘソをキャッチャー方向に向けることで、股関節の捻転を強く
左足を着地させた瞬間、足を内旋(内に絞る)させようとしています。そうすると股関節が深く回ります。
この動作によって股関節(ヘソ)
体は打ちに行っていますが、バットはまだ出てきていません。前足に内旋をかけることで下半身と上半身との間に捻転差ができます。
体に捻転差があることで、体幹部がパチンコ鉄砲のゴムが張ったような状態を作り、腹斜筋などの大きな筋肉がバットを加速させるために働きます。
前足の内旋がかかっていないと足が開いてしまい、捻転差が生まれず、バットが早く出てきてしまいます。バットが早く出る=泳がされることになります。
後足である右足も最後まで捻転して、
バットが反動で戻ってくるくらい振り切っていることが分かります。
センターから右方向へのホームランが少ないのは捻りが強い山田選手特有の傾向と言えるでしょう。ホームランバッターの多くは逆方向に打つ場合、後ろ側足の骨盤
また、中には前足の踏み込みを開いて打つ選手(オープンステップ)がいますが、これは後足側の骨盤の押し出しをしやすくするために、
しかし、山田選手はあくまでも左右の骨盤、股関節を鋭く、
<まとめ>
1.グリップの高さと大きく上げた足による位置エネルギーを利用する
2.足を内旋させることで捻転差を生み出す
→細い体をフルに活かして飛距離を出す!
バッティングでは「開き」が永遠のテーマのように扱われてます。
もちろん習得するまでには練習を続けることが必要不可欠ですが、
体が細くても打球を遠くに飛ばしたい方はぜひ参考にしてみてはい
【解説:川端 翔太(アスレティック・トレーナー)】