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岡田麻央は「かっこいい女性」を目指す。女子バスケ選手のセカンドキャリア

2017.04.19 / 森 大樹

岡田麻央(おかだ・まお)。女子バスケ界のトップで活躍した彼女は、引退後のフィールドを芸能界へ。モデル・タレント業と並行し、バスケットボールの魅力を発信し続けている。そんな彼女の実像に迫った。

岡田麻央

「セカンドキャリア」と聞くと指導者や飲食店開業、あるいは再就職といった道を思い浮かべる人が多いはず。しかし、プロ野球やJリーグのトップで活躍した選手以外の引退後についてはそもそも知られる機会が少ない。

その中でバスケットボール選手の引退後の新たなキャリアを示すべく、挑戦を始めた1人の元選手が岡田麻央(おかだ・まお)氏だ。国内女子トップリーグ・Wリーグのトヨタ紡織で活躍した岡田氏は、2015-16シーズン限りで引退。彼女は現在、バスケットボールの魅力の発信はもちろん、音楽やファッションを通した新たな引退後の選手像をつくるべく、タレント活動を始めている。

岡田麻央(おかだ・まお):
1988年11月16日、愛知県出身の元バスケットボールプレイヤー、現モデル・タレント。大学卒業後の2007年にトヨタ紡織入社、トヨタ紡織サンシャインラビッツ入団。高校時代はインターハイ(アシックス杯)で優秀選手賞受賞、2008年から2015年までAll Japan 天皇皇后杯ベスト8。2012年にはW1リーグ優勝、ベスト5受賞、国体優勝など輝かしい実績を残した。

岡田麻央

競技で道が拓かれていった人生。辞めてからどうするのか。

-岡田さんはいつからバスケットボールを始めたのですか?

小学4年の時に誘われて学校の部活でバスケを始めたのですが、そこがめちゃくちゃきついところだったんです。人生で一番辛い練習を聞かれたら小学生の時だと思います。とにかく走らせる、水も飲めない。それでも何故か楽しくて、辞めたいと思ったことは一度もなかったんですよね。

愛知県はバスケが盛んで、いい指導者の方とも出会えたことで、競技を続けていく中で進路もどんどん決まっていきました。トヨタ紡織に入ることすらも自分で決めたことがなかったんです(笑)

-そんな経歴を歩んできた中でなかなか辞める決断はできないですよね。

女子選手は一部のうまい選手を除いて、30歳前後でやめる人が多いです。私は26歳で辞めているのですが、いつまでもワクワクする人生を歩みたいと思っていて、次にやってみたいことが音楽やファッションに関わることだったので、先を考えると早い方がいいと思いました。

-選手を引退してからも会社で働くという選択肢はなかったのでしょうか。

少し悩みはしました。でも、心は結局決まっていました。トヨタ紡織は仕事と競技を両立させているところだったので、引退してから残れるというのもあって、それで入る選手もいるんです。だから周りには、大きい企業にいられるんだし、もったいないから会社まで辞めない方がいいよ、と言われていました。

でも私の思う幸せは、ここにいるだけじゃ掴めないと思っていました。一度きりの人生で、出来るだけ色んな経験をしたい、知らないことを知りたい、自分しかできないことを仕事にしたいという願望が強かったんです。

そうやって自分の好きなことを頑張ることが、結果的に誰かの力になっていたり、何かの役に立てていたりする。そんな仕事がしたかったんです。

現役の時は、そういう意味で本当にいい職業だと思っていました。自分の好きなことを追求できて、色んな場所へ行けて、自分のプレーを見て喜んでくれる人がいて。その感じが、私の性に合うんです。でも現役を引退して、その感覚がなくなってしまうのは嫌でした。本当に何の根拠もないんですが、私にしかできないことは必ずあるという変な使命感を勝手に感じて、愛知から東京へ出てきました。

岡田麻央

選手が発信する重要性。まずは自らが実践する。

-選手時代と現在で考え方や意識に違いはありますか?

私がバスケットボール選手になった時はプロ意識なんて、ほとんどありませんでした。バスケが好きで、続けられるからチームに入った感じです。女子リーグの選手はそういう人も多いと思います。

でも本来はそこの意識を持って、SNSなどでいろいろ発信すべき立場にあるはずなんです。

入ってから色んな方が応援してくださって、日本のトップリーグというとてもいい環境で私はバスケが出来ているんだなと気付きはしましたが、リーグの中でも本当にトップの選手ならまだしも、自分なんかが発信して気取っていると思われるのも嫌だし、私自身も現役時代はなんか逆にカッコつけてというか、やりたいとも思っていませんでした。

まだ世間からも、選手からもそういう発信がやりやすい立ち位置にバスケがなっていないという部分もあります。

男子はBリーグもできて、変わっていっているところもあると思いますが、まだ女子はその波に乗れていないですし。

強化は女子もできていますが、メディアに出ていくようなことはあまりやれていませんよね。

だから引退した今私は発信するということを、音楽やファッションなどのバスケだけでない違う方面からもしていきたいのです。バスケは競技を好きな人しか観に来ないと感じているのですが、その一方でストリート系のファッションとも合うし、海外では音楽との繋がりも深いです。なので、そちらの方面からも私を知ってもらって、バスケに興味を持つキッカケになれたらなと。

現役の選手たちにも、もっともっと世間に自分をアピールしていって欲しいとは思いますけどね。

日本人の特性上、恥ずかしがったり、主張しないのが美学みたいなところがありますし、そもそも選手はまず自分がどれだけいいパフォーマンスが出来るかだけを考えていますから、実際そういった事を考えて行動するのは、なかなか難しいとは思います。

でも今は日本もかなり欧米化していて、自分の意見を主張したり、スポーツもエンターテイメント性を重視するように段々なって来ていると思います。そんな時代のスピード感にバスケットも置いていかれないように、むしろ本当は最先端でいって欲しいと思ってます。

そのためにと言っては少し大袈裟なんですが、自分のできることを探しに、2015—16シーズン限りで引退して、東京に出ることにしました。春に引退して、夏頃までは会社に残り、愛知から東京に通いでモデルやボイスレッスンを受けていたのですが、ちょうど家も出ないといけなくなったので、昨年の4月に東京に出てきました。

岡田麻央

思わぬところでの出会いが縁を広げる

-でも、急に東京に出てきたところで、仕事があるわけではないですよね。

そうなんです。何の繋がりもないままいきなり東京に出てきたので、とりあえず働かないといけないと思い、活動とは全く関係ない通信系の会社に派遣社員として今も務めています。

その会社は本来、即戦力が欲しかったようなのですが、責任者の方がたまたま私の現役時代を見たことがあって、それで全く何も分からない私を、他の人と違う新しい期待を込めて、採ってくださったんです。

そしたら一緒に働いていた人の紹介でテレビやスポーツ関係の繋がりも広がっていって、応援してくれる人が増え、スポンサーも付いたりしたので、本当に東京に出てきてよかったです。正直派遣の仕事はお金稼ぎの目的だけだったのに、そこからこんなに広がっていくなんて思ってもいませんでした。もうすぐで東京に来てちょうど一年たつのですが、皆さん良い方ばかりで、出会いに恵まれてここまでやって来られました。それもバスケが繋げてくれた縁です。バスケットに助けられてばっかりの人生だなと思います。

岡田麻央

岡田麻央が目指す、“かっこいい女性”

-それではこれから岡田さんが目指す目標を教えてください。

私の理想とするアーティストやタレント像がまだ女性では思い付かないのですが、男性だとbruno mars、G-DRAGON、spicy solの雰囲気が好きで、そんな私が直感で「やりたい!」と思うことをやっていきたいです。

スポーツのタレントって熱いイメージがあるじゃないですか。真面目で健全というか。でも私は少し悪い感じというか、王道じゃない、緩い雰囲気が好きなんです。スラムダンクで私が一番好きなキャラである、仙道みたいな(笑)

あとはかっこいい女性が好きです。女の子らしいかわいい子は、見るのは好きなんですが、自分がやるのは柄じゃないですね。笑

ずっとバスケの話ばかりなので、それ中心の活動だけをすると思われたかもしれないですが、本当にバスケは関係ないこともどんどんしていきたいと思っています。音楽やファッション、そしてバスケを融合させていくことで新しいイメージをつくっていきたいです。あと、食べるのも好きなので、グルメも何か出来たらいいな。

私の自然なライフスタイルを発信する事で、結果的にバスケの魅力を知る人が増えて、日本のトップリーグがもっと身近な存在になってほしいと思っています。もちろん私1人の力ではなく、色んな人たちと協力しあって、いずれは映画を観るようにバスケの試合を観に行くような新しい常識が出来ていけば良いと思います。

ずっと大好きで、バスケをやってきたから今の私がいるので、恩返しの気持ちで、自分なりの方法でバスケット界に貢献していきたいです。

オシャレをするのも私の楽しみ。

歌を歌うのも私の楽しみ。

バスケをするのも私の楽しみの一つです。

真剣に、楽しく!

何に対しても誰に対しても、そうやって生きていきたいなと思います。