1万人収容の“魅せる”アリーナが描く「スポーツシティ・沖縄」の未来


2018.03.07 竹中 玲央奈

 


正面から見たアリーナの外観予想図 提供:沖縄市

 

 

沖縄にアリーナが出来るのは“必然的”

アメリカではスマホの位置情報システムと連動し、ショップ近辺に来たら時間限定のクーポンが発券されて通知が来たり、観戦中の座席から飲食物を購入するとスタッフが席まで届けてきたりするアプリが開発され、指定のアリーナで使えるということもある。一方日本のスポーツ観戦環境ではそこまでの体験ができるところはない。

この1万人アリーナではそういったITを駆使した新たな観戦体験の提供を観客に与えようというアイディアも持っているという。国内トップクラスのファシリティを備えるだけにとどまらず、来場者にスポーツ観戦以外のところでも満足感を与える土壌を作り、日本におけるアリーナの“あり方”を先駆者として提示していくという強い思いもある。

 

「スマートアリーナ、スマートシティというのは目指して行くべきだと考えています。我々はスタートアップカフェコザというICTの施設を作っているのですが、ここではベンチャー企業の支援を行ったりICT化の推進を行ったりしています。やはりこれからの時代にITというのは切っても切れないものですから、そういったところを活用したい。アリーナの中を“非日常の空間にする”ために演出をはじめとしたソフト面が重要になります。例えば女性はトイレで並ぶことが多いですが、どのタイミングが空いているかとか、混み具合などを教えてくれたり、予約をできたりとか。そういうのがあれば面白いですね。あくまでジャストアイディアですが、やろうと思えばできなくはないことかなと」

こう語るのは2004年に総務省入省後、2016年より沖縄市の副市長となった上田紘嗣氏だ。この1万人アリーナ計画の担当を務める同氏はアメリカにも来訪し、モデルとなりうる施設を視察してきた。すでにアメリカのアリーナを視察していた桑江市長の指示によるものだ。そして、沖縄市にアリーナを新たに作ることに関しては“歴史性”という興味深い点についても語った。

 

「市長は、ニューヨークのブルックリンにあるバークレイズセンターを気に入ったと話しており、私自身もいくつかアリーナをご案内いただきました。

市長の意向として、元々まちづくりにアリーナを活かしていきたいという中で、アリーナを作るだけではないと。沖縄市、沖縄県の中部地域で一つの新しいまちづくりとしてどう作っていくかと考えた中で、アリーナというものがある意味必然的に出て来たのだそうです。歴史の文脈でいうと嘉手納基地が沖縄市の目の前にあることによって、米国の文化も根付いていきました。その1つの象徴がバスケやライブエンターテイメントだと。それが実現できる施設というと、アリーナになりますよね。それが桑江市長のビジョンだと受け止めています。

加えて、沖縄は雨が多いので様々なイベントをするにも屋内施設のほうがありがたいんです。そういった論理から必然的にこのアリーナ構想は出来上がったのかな、と。市長の選挙時の公約として上がった背景にこうしたビジョンがあり、歴史の必然性も感じます」

 


総務省を経て、現在は沖縄市の副市長を務める上田紘嗣氏

 

アリーナとスポーツを軸に、沖縄を活性化させる

アリーナの構想が表に出てから、近隣に宿泊施設を建設しようとする動きも増えているのだそうだ。スポーツやコンサートを楽しむために来沖した観客たちが合わせてこのエリアの観光を楽しみ、地域経済の活性化に繋がることは間違いない。市としてはそういった波及効果も最大限に生もうと考えている。

 

「地域資源が豊富な中、まずはスポーツから入りますが、色々なものを巻き込んでいきたいと考えています。せっかくコザ運動公園の中にあるので、周辺の施設とのICTでの連携をできたら良いなと思います。スポーツ観戦と、地域の飲食店や中心市街とが上手に連携して、人が流れるようにしたい。そういった新しい形で“沖縄市モデル“というようなものが打ち出せると良いなと考えています。それも含めて、色々な実験をやりたいですね。おそらく今まで国体などのために作った体育館は色々なストレスがあったと思うのですが、それらのストレスを我々は材料として、1つずつ解消を図っていきたい。そうすれば最低限のものはできていくだろうし、そこにコンテンツとして琉球ゴールデンキングスという日本でも有数のトップチームがいる。かつ沖縄は音楽エンタメもすごく盛んだし、観光地としての魅力もあります。そういったスポーツ文脈とは異なったお客さんも取り込みたいですよね。特に今回、バスケットボールのW杯でレガシーとなることが先に決まりました。こういった場所で公演をしたいと思っていただけるアーティストの方が生まれて欲しいですし、市長からは、例えばここを1つの登竜門にして、“次は武道館“という形ができても面白いんじゃないかとも言われています。国際交流の拠点として台湾とかアジアからそういったアーティストを呼ぶなんてこと期待できるのではないでしょうか。」(上田副市長)

 

沖縄市をモデルとしたまちの形が新たに出来上がるとなれば、それは非常に興味深い。

アリーナを通じて、スポーツを軸とした新たな取り組みに動いている沖縄市の今後の動きとその未来に、大いに期待を寄せたい。