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歌手・田中美里が語る、音楽を使った「トップリーグエンタメ化構想」[PR]

2020.02.04 / AZrena編集部

「ラグビーと音楽を掛け合わせて、ラグビーフェスをしたいんです」

そう熱い口調で語るのは、歌手の田中美里さん。父親が慶応義塾大学時代に大学選手権優勝を経験したラガーマンだったこともあり、ラグビーは小さい頃からあって当たり前の存在だったといいます。

2019年のW杯日本大会では、元日本代表の廣瀬俊朗氏や歌手の村田匠氏と共に「スクラムユニゾン」として活動。各国のアンセムをYouTubeで配信したり、パブリックビューイング会場で披露したりして歌い広め、選手の士気や大会の機運の高揚に一翼を担いました。

そんな田中さんが次に見据えるのは、トップリーグのエンタメ化。トップリーグの開幕が目前に迫った12月に、W杯の振り返りと今後のラグビーエンタメ化構想についてお話を伺いました。

 

ラグビーらしいご縁から、仕事に繋がった

父親がラグビー選手だったこともあり、ラグビーは小さいときから日常の中に当たり前にあるものでした。週末は父親が所属していたチームのグラウンドに連れて行ってもらっていて、見学する子ども同士で遊んだり練習後には選手にお風呂に入れてもらったりしていたんです。

選手のことは、父の友人の仲良くしてくれるお兄ちゃんたちだと思っていて。物心がついて、目の前で繰り広げられているのがラグビーだと認識できるようになってからようやく、お兄ちゃんたちがただのいい人ではなくラグビー選手なんだと気がつきました(笑)。父も含めて好きな人たちがやっているスポーツだからという理由で、ラグビーのことも自然と好きになっていきました。

ソニーのオーディションに合格して芸能界に入ってからも、ラグビー好きに変わりはありませんでした。今後どんな方向性で進んでいきたいのか、好きなことの棚卸をする中でも当然のようにラグビーは入ってきていたんですよね。それに、父と一緒にラグビーをやっていた方々皆さんが応援してくれたこともあって、「これは私もラグビーを応援すべきだ!」と考えるようになりました。

それで、仕事につながるように8年前からブログやTwitterで「ラグビーが好き」と言うようにしました。誰が見ているかわからないし、そこから何が起こるかわからないからこそ発信していこうと決めて、試合を観に行ったら必ずツイートしたり、ラグビーとの出会いをブログに書いたりしてきました。それが実を結んで、ラグビーマガジンの取材を受けたのが最初のラグビー関係の仕事です。

その後、ラグビージャーナリストの村上晃一さんがご自身のブログに私の活動を書いてくださったり、仕事に声を掛けてくださったりするようになりました。実は村上さんは父と学生時代に対戦したことがあったと。ラグビー選手って、誰といつどんな試合をしたっていうのを覚えていて、その人の子どもなら応援しようって思う人がほとんどなんです。村上さんも例にもれず私のことを応援してくださって。こういうラグビーらしいご縁に支えられて、今の私があるんです。

 

アンセムを歌ったら、全チームのファンに

私は2019年のW杯をひとつの目標に活動してきました。でも、ゴールじゃなかったなと。ここが始まりなんだと、W杯を観て思いました。

今回の大会で活躍していた姫野和樹選手(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)や、リザーブでありながらも出場した際には知力の限りを尽くした松田力也選手(パナソニックワイルドナイツ)は、私と同い年。4年後は彼らが中心選手として日本代表を引っ張っていくはずです。そのときに選手の気持ちもファンの気持ちも歌の力で盛り上げるのが、私の使命なんじゃないかと思うようになったんです。

日本代表の応援だけではありません。全出場チームのラグビーアンセムを歌い広める取り組み「スクラムユニゾン」を2023年のフランス大会でもやりたい。そう思うなんて、開幕前は想像もしていませんでした。今回の大会で、生のオールブラックスの迫力、アルゼンチン代表の涙などいろんな感動を味わったことで気持ちに変化が生じて。そういった変化を生むほどに感動を大きくしたのが、スクラムユニゾンで“各国のアンセムを歌ったこと”なんです。

歌を通じてその国のファンになったし、海外から来たファンの方と仲良くなるきっかけにもなりました。予選の間はずっと熊谷のファンゾーンにいたのですが、アイルランドのファンもスコットランドのファンも、本当によくしてくれて。試合には日本代表が勝って嬉しい気持ちもある反面、彼らが帰国してしまうことに寂しさを感じたんですよね。100%喜べる試合はひとつもなくて、勝って嬉しい気持ちと負けて悔しい気持ちの両方がうごめいている感じでした。

 

スクラムユニゾンの意義

廣瀬俊朗さん、村田匠さんと取り組んだスクラムユニゾンは、前例のない取り組み。最初は何をどうやったらいいのかもわかりませんでした。歌唱指導の方法も、必要な尺も、全部やりながらフォーマットを整えていって。そもそも、各国のアンセムの意訳も自分たちで調べながら考えたんですよ。大変だったけど、その分思い入れが強くなりました。

活動の中で最も印象に残っているのは、準々決勝「日本対南アフリカ戦」の会場で匠さんと一緒にスクラムユニゾンができたことですね。たまたま二人ともチケットを取っていたんですよ!それに日本代表も予選リーグを1位で突破していて。ふたつの奇跡が重なった結果、実現できたことなんです。試合前に会場でゲリラ的に始めたら、ファンの方もメディアの方もたくさん集まってくださって。匠さんとはぐれるかと思うほどでした(笑)。皆で輪をつくってアンセムを歌唱できたことは、ものすごく感動的だったし、取り組んできたことは間違いじゃなかったんだと感じられました。

あとは、ウェールズ代表の公開練習。スクラムユニゾンとして参加させていただいて、北九州市民の方15,000人と一緒に歌って出迎えたんです。選手たちはとても驚いていて、写真や動画を撮っていました。あの歓迎ムードのおかげで、ウェールズ代表はあそこまで勝てたんじゃないかなと思います。ウェールズを知らないなら小倉から出ていって、ぐらいの勢いで北九州の皆さんは応援していましたから(笑)。

その応援を素直にウェールズ代表が受け取り、力に変えられたのは、日本がヨーロッパから遠く離れた島国だからというのもあると思います。歴史的な背景がないからこそ、フラットに楽しんでもらえたのではと。私たちがスクラムユニゾンに取り組む意義はこういった点にもあると思うので、継続していきたいですね。

 

「ラグビーフェス」を実現したい

これから、W杯のあの盛り上がりや雰囲気をトップリーグにできるだけ持ち込んでいきたいと思っています。サンウルブズやセブンズ、女子ラグビー、デフラグビーにも同じように流れを持ち込みたいですが、まずはトップリーグから。

具体的な取り組みとしては「ラグビーフェス」の実現を考えています。W杯時の熊谷のファンゾーンは、皆でラグビーを観るだけじゃなくて、バンドを呼んだり私が歌ったりもしていたんですよ。本当にひとつのお祭りみたいに盛り上がっていたので、音楽フェスでもない新しいジャンルのフェスができるなと感じました。

それに今日、ラグビーの可能性を探るトークセッション「ノーサイドダイアログ」に参加し、“音楽×ラグビー”をテーマに熱く語れる人がこんなにも多くいるんだと知って、自信になりました。音楽を使ったエンタメ化構想は絶対に成功するなと。会場に流れていた音(入場時の和太鼓演奏、黙祷時の静寂、各国のアンセム、試合中に流れていた曲など)をプレイリストにして余韻を味わっている方もいて、そんなユニークな発想も取り入れていけたらおもしろいですよね(笑)。

ラグビーフェスでは、試合前・試合中・試合後とそれぞれコンセプトを変えて、試合があるその日一日をまるっと楽しめるコンテンツにしていきたいんです。試合前はチーム歌を皆で覚えて歌ったり、“この選手のこのプレーに注目!”みたいな解説コーナーを設けたり。試合中はどの会場でも同じメジャーな曲が掛かるようにすれば「きたきた!」ってワクワクしてもらえるかな、とか。試合後は選手も呼んで反省会をしながら、ノーサイドの精神でチーム関係なく乾杯できるようにするといいんじゃないかとか。たくさんの方法を考えています。

ラグビーはもともとファン同士が仲良くて皆で盛り上がれる土壌はあるんです。エンタメ要素の加え方を知らなかったり、人手が足りなかったりしただけ。選手やチームには、勝負とファンサービスに集中してもらいたいので、音楽業界に身を置き、かつラグビー愛を持った私がラグビーのエンタメ化を形づくる役割を担っていこうと思います。

自分の足で関係各所をまわり、自分の言葉で説明している最中です。まずは1月、イベントをやろうとしているので楽しみにしていてください!