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鈴木由路(ハンググライダー)の、夢の続き。憧れのあの大空へ

2014.10.22 / AZrena編集部

鈴木由路
 
「雲と遊ぶ」ハンググライダー選手・鈴木由路さんのインタビュー。空を飛んでみたい!と多くの人が一度は憧れる空の世界。空の魅力をたっぷりとお伺いしていきたいと思います。
 

ジブリ映画の影響で、ハンググライダーの道を歩む

 
――鈴木さんのスポーツ経歴を教えてください。
 
小学校4年から水泳を習っていました。その頃は泣き虫だったので、よく泣いていましたね。小学5年のときから並行して地域のソフトボールクラブにも入っていました。水泳はバタフライまで覚えて辞めちゃいました。ソフトボールは公式試合では1本だけしかヒットを打てませんでした。
 
――中学と高校は何をされていたのですか。
 
中学、高校とバスケットボールをしていました。ポジションは中学はフォワードで、高校はガードでした。ただセンスがなくてですね。ド下手でしたよ。
 
――レギュラーではなかったのですか。
 
中学校のときはレギュラーだったのですが、高校のときはレギュラーでなく引退試合も出ることが出来なかったです。ガードなのにドリブルが苦手でしたから(笑)
 
――高校の時に、レギュラーではない中でバスケットボールを続けていたモチベーションは何かあったのですか。
 
モチベーションっていうより、周りのみんなも部活をやっている状態だったので、辞めるという選択肢は浮かんでこなかったです。高校に入るときにバスケットボール部に入るか陸上部に入るか悩みました。中学のときに長距離がそれなりに得意で、バスケットボール部の仲間も速かったのですが、マラソン大会の上位3人はバスケットボール部で3位が僕でした。それもあって高校で陸上部に入るか悩みましたが、1年のクラスでたまたま隣にいた子に、一緒にバスケやろうぜって誘われてバスケットボール部に入りました。
 
――そうなると大学からハンググライダーを始められたのですか。
 
そうです。大学は東京農工大学で、1年のときからハンググライダー部に入りました。なぜかというと、もともと大学に入ったらハンググライダーを始めるつもりでいましたから。大学を選ぶときには、ハンググライダーサークルがある大学が前提で、あとは行きたい学科や進路と国立であることで選ぶと東京農工大学になりました。
 
――なぜハンググライダーをやりたいと思ったのか教えてください。
 
小学校のときに空を飛ぶ夢をよく見ていたんです。また、宮崎駿さんのジブリ映画「天空の城ラピュタ」や「風の谷のナウシカ」が大好きで、空を飛んでいる姿にインスピレーションを受け、将来自分は空を飛ぶんだと決めていました。中学校の頃にはテレビでたまたまスカイダイビングをやっているのを見て、スカイダイビングのインストラクターになりたいと思うようになりました。
 
そして高校時代、家の裏の河川敷をランニングしていた時にパラグライダーの練習をしている人を見つけて、これ空を飛ぶヤツだと思い、気になって30分くらい体育座りで遠くから見ていました。小心者でしたが勇気を出して聞きに行き、そこでパラグライダーという名前のスポーツだということを知りました。家に帰ってからすぐにパソコンで検索すると、ハンググライダーというスポーツも見つけて、これはラピュタに出てくる凧とかナウシカに出てくるメーヴェと一緒だ!と思い、このときハンググライダーをしよう!と決めました。
 
鈴木由路
 
――ラピュタとナウシカを見ると確かに空を飛んでみたいという気持ちになりますね。もともと物理もお好きだったのですか。
 
そうですね。大学も専攻は機械システム工学科でした。そこでの勉強は気流のイメージ作りには役立っているとは思います。

雲や地形などから上昇気流をイメージ

 
――ハンググライダーの道具メーカーというのもあるのでしょうか。
 
そうですね。メーカーが出しているものは全てしっかり設計された状態で作られています。自作のものでは大会にも出られないです。また、メーカーが作ったものも規格に沿って作られていて、規格に合ってないと大会に出られないです。
 
――ちなみにどこのメーカーがつくっているものなのですか。
 
世界でメジャーなのは、僕も使っていますがオーストラリアのモイス社です。あとはイタリアやウクライナ、アメリカのメーカーが主流です。大体4つの会社がメインですね。日本のメーカーは初心者用のグライダーを作っているところはありますが、競技用を作っているところはないですね。
 
――ハンググライダーの競技人口はどれくらいですか。
 
日本では、1000人くらいです。
 
――鈴木選手は最初から競技としてされていたのですか?
 
いや、ファンスポーツとしてスキーを楽しむために始めるのと同じように、自分もただ空を飛びたいと思って始めました。最初は競技があることも知らなかったです。ただ単に空を飛ぶのは気持ちいいな、くらいの気持ちでいましたね。やっていくうちに競技があることを知って、知り合いの学生が大人の大会に出始めたと聞いて、僕もその大会に出てみようと競技を始めました。
 
――競技としてはどういった形で競うのでしょうか。
 
基本的には長い距離をいかに速くゴールするかの勝負です。まさにレースですね。
 
――それは一斉に飛び出すのですか。
 
一斉には飛ばないですけど、タイムアタックではありません。順々に飛び出して、先に飛び出した人は空中で待機していて、時間になったら一斉にスタートするという形です。
 
――空中で待機できるとは初めて知りました。
 
ハンググライダーは上昇気流の中で旋回して高度を上げて楽しむスポーツです。それで高いところから景色を眺めたり、いろいろなところに行ってみたりして楽しむのですが、上昇気流で高度を上げたら、ハンググライダーは動力が付いていないので、滑空といって高度が落ちながら進んでくだけなのです。そのうち次の上昇気流を見つけることができるとまた高度を上げることができます。滑空して、上昇気流を見つけて…と繰り返してやっていくと、80kmくらいは飛んでいきますね。
 
鈴木由路
 
――時間にするとどれくらいの間飛んでいるのですか。
 
日本の競技だと50~80kmの距離を1~2時間くらいで競いますね。
海外だと、100km~200kmの距離を2~5時間かけてレースをします。
 
――飛んでいる間はやはり気持ちいいですか。
 
それはもう気持ちいいですよ。ただ僕の場合、大会のときは気持ちいいとかはなく、どこに上昇気流があるかに神経を注いでいます。
 
――どのようにして上昇気流を見つけるのでしょうか。
 
上昇気流は目には見えません。ただ、雲や地形などの目に見えるものからイメージします。大体、あそこにありそうだなと思って当たる確立は2~3割くらいですね。
 
――下降気流によっての事故が起きたりする危険はあるのでしょうか。これからやろうとする人もそこが気になると思います。
 
大抵の下降気流では事故は起きません。また、事故が起きるほどの強い下降気流のできる気候のときは飛びません。事故が起きるような気象というのは天気予報の段階で分かるので。基本的には落ちるということはほとんどないです。でも、機体の整備不足であったりとか、アクロバットなどの安全な飛び方以外の飛び方をしたときには、ひっくり返ったりすることもあります。そういうときは緊急用のパラシュートを着けているので、それを使って安全に地上に降りられるようになっています。
 
【後編】へ続く