フットサルを文化に。“Fの10年”を見てきた2人の想いとは
10年目を迎えたFリーグの初期からご活躍してきたデウソン神戸の松宮充義選手(写真:右)と原田浩平選手(写真:左)。インタビュー後編では今シーズンの抱負、そしてこれからの目標について伺った。
試合に出ることの難しさ。敵は相手チームだけではない。
-今まで選手として一番嬉しかった時を教えてください。
松宮:やはり全日本選手権で優勝した時ですかね。
原田:自分が点を取ってチームが勝つことです。あとは知り合いが観に来てくれると嬉しいです。
-逆に辛かった時を教えてください。
松宮:コンディションがいいのに使われないのはしんどいです。今までいろいろな監督の下でプレーしてきましたが、しっかり実力を見て選んでくれる監督とそうでない監督がいました。後者の場合はきついです。その場合、練習で結果を出したとしても使われないんです。
原田:前十字靭帯を切った時ですかね。それまでも捻挫くらいはしたことがありましたけど、そんな大きな怪我はなかったですから。しかも得点王争いをしている中での怪我だったので、きつかったです。怪我の直後はこれからどうしようか悩みましたが、一回フットサルから離れてみようと考えたら、楽な気持ちになれたんですよ。でもやっぱりフットサルが好きで、これしかないと思えたので戻ってくることができました。
人が集まり、繋がる場所が好きな二人
-フットサル以外に時間がある時にやっている趣味を教えてください。
松宮:最近は子供と一緒にいます。まだ歩けるようになったばかりなので、特に何をするというわけではないのですが。若い頃はよく洋服買いに行ったりもしましたけどね。
原田:僕はみんなで集まるのが好きですね。全然別のところで知り合った友達を呼んできて、一緒になって遊んだりします。
松宮:そこは僕も似てると思います。人と人を繋げるのが好きなんです。
あとは特に試合前ですが、音楽は聴きますね。J-POPから洋楽まで、幅広く聴きます。今だと試合会場ではナオト・インティライミさんの曲が流れているのですが、歌ってしまったりすることもあります。
これは僕の勝手なイメージかもしれませんが、サッカーがうまい選手には音楽が流れている感じがします。リズム感があるんですよ。下手な選手だとラダートレーニングでもうまくリズムが刻めなかったりしますしね。やはり僕の場合も調子がいい時には頭の中で音楽が流れています。
人としての魅力に加え、選手として“話せる”ことが重要。
-同じチームに所属しているお二人ですが、お互いの魅力を言い合ってください。
松宮:この子、独特なものを持ってるんですよ(笑)
いい意味で欲がないんです。人に愛される、引き寄せるパワーを持っています。それを計算してやっているわけではないということが分かるので、周りに人が集まってくるのかな、と思います。これは浩平が元々持って生まれたものなんだろうと、対戦相手として戦っている時から感じていました。
原田:ミツくんと一緒にいると安心しますね。誰も彼の悪いことを言う人もいませんし、ミツくん自身も人の悪口を言ったりしません。
-一緒にプレーをする上ではどういう選手がやりやすいですか。
松宮:話せる選手です。コミュニケーションを取れる選手はやりやすいです。もちろんいろいろな選手がいるので、理解し、理解されないといけませんが、試合中だったとしてもどうして欲しいかを細かく話せる選手がいいですね。
原田:僕は自分を見てくれている選手です。あとは同じくコミュニケーションを取れる選手です。試合が終わると僕は何か伝えたいことがあるかチームメイトに聞いたりするんですけど、そこではいいづらい選手もいるとは思うので、まずは自分から感じたことを言うようにはしています。相手がどうしたいのか、早い段階で把握しておきたいですから。
答えを言わない。それが指導する側としての心得。
-今は子供達に指導する場面も多いと思いますが、教える上で意識していることはありますか。
原田:オーバーコーチングをしないということですかね。…まぁC級(指導者ライセンス講習)で習ったんですけど(笑)
松宮:習ったこと、そのまま使いおったな!
原田:でも人には自由な発想があると思っていて、絶対こうした方がいいということはないと思うんです。自分と逆のことをする=予想できない、読めないということになりますよね。だから自分とは違う考えを認めながら、自由にやらせてあげたいです。
松宮:それはこの前も一緒に話していて、選手側が「絶対こうしろ!」と言ってしまうとその子が自分を超えるものを持っていた時に才能に蓋をしてしまうことになります。なので、子供に対しては僕らからアイディアの1つとして選択肢は出したとしても、それが絶対とは言わないようにしています。
あと僕が教えているチームではできるだけリアルに近い状態で練習するように意識しています。試合中にそんな状態があり得るかを考えさせるということです。より実践に近い形を作るのは僕がやりますが、そこでどういうプレーを選択するかは子供達に任せています。実際、この前低学年のチームは試合でシュートコースがない時にキーパーの頭の上を浮き球でシュートを狙って会場を湧かせていました。そういうアイディアを渡してあげることはしていて、何を選ぶかは本人次第です。
悲願のタイトル獲得、そしてフットサル界の未来のために。
-さて、6月からFリーグも開幕しました。今シーズンの目標を聞かせてください。
原田:今シーズンはメンバーの入れ替わりも多くありましたが、人任せにせずみんな一人一人が責任を持ってプレーをし、全員守備からの全員攻撃という形がチーム内で浸透しています。
僕はデウソン神戸の設立1年目からいますが、まだタイトルを獲ったことがないので、とにかく何か1つ獲得したいです。必ずプレーオフに進出して今年こそ優勝したいと思います!個人としてはまた日本代表に戻ることが目標です。
松宮:ほぼ全員が日本人で構成されたチームですが、デウソン神戸は攻撃力に溢れたチームです。
ポテンシャルが高く、経験豊富な選手も多く、それでいて10代の選手もメンバーに食い込むバランスの取れたチームになりつつあります。“お金を払う価値のある試合を”を目標に、戦い続けたいと思います。
チームにはプレーオフに出場し、優勝争いを経験して欲しいと思います。
-それでは最後に、今後の目標と読者へのメッセージをお願いします。
原田:フットサルはやっている人は多いですけど、観るスポーツとしてはまだまだで、サッカーみたいには定着していません。未だにFリーグの試合は芝の上でやっていると思っている人も多いみたいです。まずは会場に足を運んでもらうためのきっかけ作りをしていないといけないと思っています。そのために僕らもクリニックなどをやっていって、まずは選手のすごさを体感してもらい、接点を持ったところから今度は試合を観に来てもらえるような働きかけをしていきます!
松宮:僕はまず、フットサルを「楽しむ」ことです。楽しいから始めたスポーツなので、その気持ちがなくなったら辞めた方がいいと思っています。いかに楽しめるのか、そのために何ができるのかを常に考えています。それがお客さんを入れる、コンディションを上げる、ということに繋がってくるんです。
フットサルはすごく面白くて、一回やったらハマるくらいのスポーツです。その魅力を伝えるにはまず、楽しさを味わってもらう機会を作らないといけないわけです。だから僕らはクリニックをやったりすることで、実際に選手のプレーを近くで体験してもらうようにしています。
まだ日本においてフットサルは文化として根付いていません。今も少年サッカーのコーチにはフットサルなんてやらせたらいけない、サッカーが下手になると言っている人がいます。でもそんな考え方をしているのは日本だけです。一部の指導者はサッカーをうまくなるためにフットサルがどれだけ重要なのか、理解しきれていないんです。そういうところから変えていかないとフットサルは文化にはなっていかないでしょうね。
サッカーを超えるくらいの魅力をフットサルは秘めています。それを僕や浩平を含めた各チームの選手が中心となって、活動していくことでこれからも発信できればと思います!
松宮選手、原田選手が所属するデウソン神戸の直近の試合予定は
7月2日(土)vsバルドラール浦安(AWAY)@墨田区総合体育館
7月8日(金)vsシュライカー大阪(HOME)@グリーンアリーナ神戸 ※関西ダービー