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【後編】フットサル界を牽引する、もう1人の“黄金世代”。小野大輔は己の道を貫き通す

2014.05.21 / AZrena編集部

小野大輔

 

【前編】はこちら

 

海外に出て感じた、日本との文化の違い

 

-小野さんが感じる、サッカーとフットサルの違いって何ですか?

難しいな…。意思の疎通ですかね。これは俺の意見ですが、比べ物にならないくらいフットサルは意思の疎通が必要だと思いますよ。サッカーにおいても超一流の選手・チームは別かもしれませんが。ただサッカーの場合は、ドリブルがとても上手い人がいると一人で突破出来たりすることも多いんですけど、フットサルはそうはいかない。一緒に食事をしたり、チームメイトのことを理解したりして結束力を上げていくことは、本当に大事です。個だけでは勝てない。チームワークが全てと言っていいくらい大事です。

 

-なるほど。フットサルはボールを持ってから考える時間も少ないですし、チームメイトが状況によってどういう動きをするか分かっていることが本当に大事なんですね。

はい。なので移籍してチームが変わると大変です。そのチームの人間の性格から身体能力までインプットして、例えば足が遅い選手には、前目にゆっくりパスを出そう。とかを考えながらプレーします。

 

-ちなみに、海外と日本において一番違うな。と感じたことは何でしたか?

一言でいうと文化、考え方ですね。

 

-具体的にいうと、どう違いましたか?

これは結構みんなに言っているんですが、良い意味でも悪い意味でもヨーロッパの人ってストレートなんすよ。文化で言うと、娯楽が無いし、1つの村を凄く愛するし。隣町とは敵対心が半端じゃない。ダービーって言ったら、何部リーグだろうが、空ビン振り回して喧嘩しながら応援するし。選手も、上手い下手関わらず自分に自信を持っているんですね。

例えで話すと、ドリブルが上手い選手がいる。その選手は、2部リーグだとかなりの確率でドリブル突破が出来る。DFを抜けるんです。ただ、1部と練習試合をすると、やはりレベルが上がるため簡単には抜けない。だけど、単純なんで、突っ込んでいくんです。そうすると、7割は取られますが、3割は成功しもの凄くチャンスになるんですね!

ただ、日本人はこの人達には、このプレーが通じないな。と思ったら、2度とそのプレーをやらないですよ。むしろ自分の得意なプレーを出すよりは、マイナスにならないことだけを考えるプレーになるんですね。でも、彼らはストレートだから、突っ込んで行くわけです。

ヨーロッパの人達は、成功したら俺は凄い。ダメだったら今日は運が無かった。極端にいうとこんな感じです。日本人はかなわない。と思ったら得意なプレーをやめてしまう人が多い。そうなると、かなわなくなっていくんですよね、上の連中には。

 

-確かに日本人は、そもそもマイナスを嫌いますからね。叩かれる事を嫌うというか。褒められるより、叩かれない方を選ぶというのは、ある意味文化もあると思います。

そうなんですよ。だから例えば日本のあるチームが、ちょっとガタイの良いフットサル素人の体格が良い外国人にブラジルのユニフォーム着せてフットサルの試合をやった場合、日本のチームは最初かなわないな。という概念が少しあって5分くらい点が入らないと思いますよ。ヨーロッパはまっすぐプレーするので関係ないと思います。その差ですね。

 

-全てのスポーツ、ビジネスにも当てはまりそうな話ですね。

全ての競技に言えると思いますよ。文化の話で言えば、ヨーロッパにいる時は、自分たちが試合する前に子供達のダービーマッチがあったりするんですが、それもビン持って本気で応援してますからね、向こうのファンは。10歳くらいの子達の試合も、本気なんですよね。例えば自分の贔屓にしているチームが負けても、本当はあいつがあと5点取れたから俺らのチームが勝ってた。とかあいつのシュートは3点分だった。だから俺らの勝ちだ。とか言ってますから(笑)スポーツを応援する。という意味でも大分文化の違いがあります。

 

突き詰めたその先に見えたもの、そして親への感謝

 

-フットサルをしていて、嬉しかった事やインパクトに残ったことを教えてください。

フットサルで嬉しいのは、やっぱりかなわないな、と思っていた相手に、チームワークで勝利することですよね。インパクトに残っていることも色々あるんですけど共通して言えるのは、チームのために自分が貢献して勝利に導くことが出来て、みんなが喜んでいる。あの瞬間は最高ですね。あの感じを知ってしまったら、もう止められないです。

 

-フットサルをやる人口がこれだけ増えたことについては、どうですか?

昔は、フットサルは今より全然マイナーでしたし、フットサルやっている。って言うのが嫌だったんでサッカーやっています。って言ってました。でも今は、何にもないところから色々な人の力があって積み上げてきて、国内のFリーグが出来て、海外に行く人間も出てきて。そこからは、色んな番組で取り上げてもらったり、一般の人がフットサルコートを使ってフットサルをやっていたり、子供達がサッカー教室ではなくフットサル教室に来てくれたり。見る競技としてはまだメジャーでは無いかもしれませんが、やる競技としてはメジャーになってきたことも嬉しいですね。

自分がやれることを突き詰めていった結果だと思います。個人的に嬉しいこともたくさんありますね。自分がadidasと契約出来ている事もそうですし、フットサルをやり続けていて、ジダン(元フランス代表サッカー選手)とボールを蹴る事が出来たり、サッカーで勝てないと思っていた最初に挙げたメンバーと仲良く飲んだり一緒にトレーニングしたり出来るようになったり。

後は親はどうしようもない俺を応援し続けてきてくれたから、代表の試合で笑っているのを見ると、やってきて本当に良かったな。と、そう思います。

 

-親御さんは本当に嬉しいでしょうね。

フットサルに出会えたおかげです。また、フットサルのコーチをやっていて、子供達と接する機会があるんですが、子供達も自分の試合を見せただけで、例えば負けてても頑張り続けることを覚えたりとか、出来ない事をやろうとチャレンジする子が出たりとか。子供は言ってもそう簡単には響かない。だから、見せることが大事なんだな。ということも分かりましたね。だからこそ、本気で普段からプレーすることも、子供と接することもするべきだな。と思います。

 

小野大輔

 

自分の魅力は“バカなところ”

 

-では、ここからは皆様に聞かせて頂いている、プライベートな部分を教えてください。

ここからが大問題ですね(笑)

 

-フットサルをしていなかったら何をしていたかったですか。

それが何にも無いんですよね。でも服が大好きなので、アパレルとかは楽しいかな、と思います。

 

-スポーツ以外の趣味はなんですか。

やっぱり、服やスニーカーは好きですね。後は、車を運転することです。

 

-ご自身の魅力を教えてください。

34歳らしからぬ、バカなところ。

嫌な事とかすぐに忘れるし、人が気にする事を気にしない。人が気にしない事は気にしたりしますけど(笑)基本バカなので、ポジティブ以外なんにもないです。

 

-だから、海外にもすぐに馴染めたのかもしれませんね。

いや、海外に行った時は本当に大変でしたよ。最初なじめていないうちは試合でも練習でも仲間からパスも来ないし、超ガタイが良いブラジル人と1vs1で喧嘩したり。

ただ、そのブラジル人とは、その喧嘩の後一番仲良くなりましたけどね。その後も、子供にチノ(中国人)ってバカにされたような口で言われたり。その時は、仲良くなったブラジル人がその子供を捕まえて「次言ったら…」みたいに怒ってくれたんですけどね(笑)

 

-小野さんは、その子供達に何と言ったのですか。

「次試合見に来い。そこで下手だったら、なんと呼んでも良い」って言いました。それで良いプレーを見せると、これも文化の違いはあるんですが、スコーンと態度も変わって。「おい小野、惜しかったなこの前は!」とか「頑張れよ」って言われたり。面白いもんですよね。

 

-いろいろな意味で実力主義ですし、認められることが大事ですよね。他にもありましたか?

プライベートでは、ナイフ突きつけられたりもしました。なんか電車乗ってて広告みたいのを目の前に置かれて、「お前見ただろ?」って。それで、お金出し渋ってたらナイフつきつけられましたからね。

結局1ユーロ払いました。1ユーロでナイフかよって思いますよね(笑)もう本当に色々あったんで、なんでも出来そうな気がしてます。

 

-海外に行こうと思って、パっといく行動力も凄いですよね。少し話は変わりますが、いつまで現役でいたいというのはありますか?

特に時期は決めてないですが、監督とかコーチになるつもりはさらさら無いですね。絶対自分が出たいって思っちゃうから。

 

-監督になっても、「交代、俺。」って言いたくなりそうですね。

そうなんですよ。まぁこう思っているうちは、現役なのかなって感じたりもしてます。ただ、もしやめても子供達のスクールはずっと続けていきたいですね。

 

-教え方の方針などはあるんですか?

スクールでは、基本的に3つのことだけ約束があるんです。

・出来ないと言わない

・何回失敗してもいいからチャレンジする

・楽しむ

という3つです。挨拶するとかもあるんですが、基本的にこの3つさえ出来れば何をしても良いというスタンスなんですよね。

 

-楽しみながらプレーする時が、一番伸びる。とも言われますしね。みんなが知らないフットサルもしくはフットサルプレーヤーのまめ知識みたいなものがあれば教えてください。

ヨーロッパの選手は、足から局部まで全ての毛を剃ってましたね。特に夏は。毛がないとオイルマッサージが足に効きやすいんですよね。シャワールームで皆がT字のカミソリで一斉に毛を剃るので、排水溝がつまって、「水流れねぇよ!!」みたいになるくらい剃ってます。で、さらにその毛をまた摘んで投げ合ったりしてるんですよ。

 

-小学生じゃないですか!

しかもその話をネタに1週間くらいは笑っています。むこうは娯楽が少ないので(笑)

 

-最後に読者の方にメッセージをお願いします。

フットサルを生で見にきてください!あともう1つ、何かをする上で自分自身でやりたいことを貫くことが本当に大事だと思います。たくさん、マイナスな出来事が起きても、自分が信じた道や方法を信じて継続的にやっていくことが、本当に大事だと思います。

 

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